左打者が放つ左中間へのライナーとアーチ式コンクリートダムは、力強さと美しさを兼ね備えているという点で似ている。 Baseball is my real life!
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美しい光と残酷な陰
「思い出代打」って言葉ありますよね。高校野球の試合で、敗色濃厚な最終回に控えの選手が代打で登場するとこの言葉が出るものです。「3年間頑張った証に、そして最後の思い出に」という監督の温情采配。

それまでの努力をたった1打席に懸けるその姿に心を打たれるものです。2年と3ヶ月間、厳しい練習に耐え抜き、ようやく迎えた晴れの舞台がたったの1打席。この1打席に全てを懸けるその姿はあまりにも美しい。

勝ち負けだけでは語り尽くせない高校野球だからこそ存在するこの美しさ。それを演出する思い出代打。ただ、その場に立つことすらできない存在がたくさんいるのです。


ということで、ちょっと思い出話を。
野球部の主将だった俺には夏の大会前に大きな仕事がありました。組み合わせ抽選会です。何といっても2年と3ヶ月間の全てをぶつける相手を決めるわけですから、ただクジを引くだけでも手に力がグッと入ったものです。しかもテレビで生中継してますしね。

実はこの抽選会に際して、ちょっとしたエピソードがありまして。
抽選会って主将ともう1人の部員で行くのが普通なんですね。で、ウチの部には野球初心者が1人いて、みんなとの同じ練習を耐え抜き、辞めずに最後の夏まで頑張ったんです。ちなみに阪神ファンでしたっけ。
でも現実は非情で、総勢20人ほどの弱小野球部に於いても、彼のレベルはとても最後の夏の試合に出れるようなものではありませんでした。練習試合には出たことがあっても、公式戦にも1回も出たことがなく、常にランナーコーチでした。

そんな折、監督が抽選会前日に俺を呼んで「明日の抽選会だが、○○(初心者の彼)を一緒に行かせようと思う。残念だがコールドの流れにでもならない限りあいつを試合に出すのは難しい。ただあいつも一生懸命頑張ってきた。だからせめて抽選会にだけでも連れて行きたいと思うんだが、どうだ?」と提案してきたのです。
俺は少し間を置いて、「わかりました。そうしましょう。」と頷きました。


悩みましたね。どういう風に彼に伝えようかと。言い方次第では、彼の夏が精神的に終了してしまう恐れもありました。
彼の出場がないことは誰もがわかっていました。彼自身もわかっていたのでしょう。ただ、そんなことは関係ありませんでした。1年の時から一緒に練習してきた仲間に「最後の夏、残念だがお前の出番はないから」と告げるようなものです。伝える方も、伝えられる方も残酷。
でも変に言葉を作っても逆に気まずいので、「明日の抽選会、お前と一緒に行くから時間遅れるなよ。」とだけ伝えると、彼は「俺?…オーケー、わかった。」とだけ言いました。

この「俺?」と「オーケー」の間がとてつもなく長く感じましたね。恐らく1~2秒だったと思うんですが、この数秒間、俺は彼の顔を見ることができませんでした。


最後の試合、彼は3塁コーチャーズボックスから出ることはありませんでした。敗退後に彼が流した涙は、俺が流したそれと同じ意味だったのか、それとも彼だけが知る意味を含んでいたのか…


華々しい「思い出代打」にすら到達できない存在。
高校野球とは美しい反面、何とも残酷な一面を持っているものです。

あれから9年。
今年もまた、美しくも残酷な夏が始まる――
コメント
この記事へのコメント
お久しぶりです。
実はうちの倅も野球部でして(まだ1年ではありますが)
当然、今年の大会には登録されませんで。
親の贔屓目で見ても晴れ舞台には立てそうにありません。

やはり、この彼同様自分も理解しているようです。
でも。
「「今」、自分をを披露する場がないだけだ」と言います。
いつか自分の力を出し切るために。
そう思えばいいと。
話をしなければ高校生の分際では辿り着けなかったかも知れませんが、そう思えたら野球やってよかったねと思います。
悔しくない訳無いと思いますが。

沢山の高校生たちの夏が輝きますように。
2006/06/24(土) 18:54:37 | URL | たい #cLn.jjQU[ 編集]
>たいさん
どうもです。
高校野球に限らず、学生スポーツの真の目的は試合に出ることではなく、「人間的に成長する」とうような、もっと大きなもの。でも、それに気づくのは大人になってからです。
当事者にしてみれば、一番重要なのは晴れ舞台に立つこと。それでいいと思います。もっと大切なことに気づくのは、時間が経ってからでも決して遅くないと思います。

まだ息子さんにはあと2年あります。その2年間は目の前の野球と目的にがむしゃらになれば、必ずかけがえのない経験となり、「野球をやっててよかった」と思うでしょう。結果がついてくれば尚よし、です。

息子さんが「野球をやっててよかった」と思ってくれること願っています。
2006/06/24(土) 19:45:39 | URL | くっきー #-[ 編集]
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